拍手お礼:勘違いマフラー

拍手更新、1年ぶりとは自分で驚きました。ホントぼんくらですみません。表の数字、年月日にします。大反省。

拍手お礼は「エビタイマフラー」の続きです。ドゾー。

喫茶店で向かい合わせで座る2人。久美子はおずおずと包みを差し出した。
その包みが何なのか慎はすぐに察しがついた。
「わざわざ買ったの?いらないっつってんのに」
「そんなわけにいくか。これはケジメだ」
「ケジメより愛が欲しいね」
「なんだとぉ!?いいから受け取れ!」
「プレゼントなら是非とも受け取りたいけど、弁償じゃなあ」
「ああもう、うるさい!おまえ、意外と頑固者か!?」
包みを押しつけられて慎は渋々と包みを受け取った。
ようやく肩の荷が下りた気分でホッとした久美子だったが、次の瞬間ハッと気づいた。
「おまえ、もしかして……」
久美子の顔色がみるみる青ざめていく。
財布から小銭を出して、自分の分のジュース代をテーブルに置いた。
「ごめんな」
呟いて席を立った。

その場に残された沢田慎。
(山口のヤツ何か勘違いしている!?)
頭の中で警報が鳴り響いた。山口久美子は思い込みの激しいところがある。早とちりして突っ走ることも度々ある。今がその状況だと思った。
慎は慌てて会計を済ませて店を出た。
久美子の背中が見える。全力で走って追いついた。背後からでも久美子が泣きじゃくっているのがわかる。肩を震わせて何度もしゃくりあげている。
「山口、おい、山口!」
久美子が歩みを止めて振り返った。両目から滝のように涙が流れ、ついでに鼻水まで流れている。
(うわぁ……)
久美子の泣き顔を見るのも1度や2度ではないが、この形相には毎度驚かされる。
「沢田ぁぁ、ごめんなぁぁぁ」
「いいって、なんでそんなに泣いてんだよ?」
「大事なマフラーだったんだろ。
 プレゼントで思い入れがあったんだろ。
 沢田を一途に思っていて
 沢田も憎からず思っている女子からの
 心のこもった贈り物だったんだろ。
 そんな大事なマフラーを私は、私はぁぁ」
あまりの勘違いっぷりに慎は卒倒しそうになるのを堪えた。

「俺が出先でテキトーに買ったマフラーで、思い入れなんか1ミリもない!」
珍しく声を荒げた。沢田慎の激しい剣幕に久美子がひるんだ。
腕をとられ抱きしめられた。
「そんな想像されちゃう俺って、おまえの何なの?」
耳元で囁かれた。せつなそうに擦れた声だった。
その息づかいと低音の声に、久美子の心拍数が上がり体温が急上昇する。

(なんだ?
 なんだ?
 なんなんだ?
 わかんないよ。
 なんて言えばいいんだ?)

「……答えは?」
また耳元で囁かれた。沢田慎の腕の中で軽くもがいて顔を見上げた。
誰もが目を止めるような整った顔の瞳が不安そうに揺れていた。

(どうしてそんな顔をする?
 不安だったのは私のほうだ)

山口久美子は、心の底から大事に想っている人から疑われて傷ついた沢田慎の気持ちを察することができなかった。
しかし理由がわからなくても、辛そうな表情を何とかしてやりたいと思った。

(そんな顔するな。何でもするから)

踵を上げた。
唇に軽く触れてすぐに離した。

離した次の瞬間、唇が塞がれていた。
驚いて目を見張った久美子が見たのは瞼を閉じた慎の顔。
息づかいが唇を通して伝わってきて、久美子の体温は更に上昇する。
ピッタリと寄せ合った体が体温と鼓動を共有する。
ここが公道だなんて頭から吹っ飛んだ。
背中に回された腕にはこれでもかと力が込められている。
山口久美子に振り切るつもりなど全く無いのに。
そんなに捕まえなくても、どこにも行かないよ。
そう言いたかったけれど、唇は塞がれたままで声にならなかった。

2013年1月30日作成