里見学習院高等部にて、旧生徒会役員がリコールされ、全生徒の自主選挙で新役員が選出された翌日。
山本春海が生徒会室で新役員たちの前で軽く挨拶をした後に、会議用の長机の下からおもむろに中くらいの箱を取り出した。それは家庭用の郵便受けのようだった。
「なに?これ?」
如月いるかを筆頭に新役員の面々は首をかしげた。長机の上に乗せられた箱には大きく「目安箱」と書いてある。
「歴史の授業で聞いたことあるだろ?」

目安箱
享保の改革で将軍吉宗が評定所門前に設置した直訴状を受理する箱。毎月三回、将軍が投書を閲読した。訴状箱。
三省堂提供「大辞林 第二版」より

「今まで生徒会に言えなかった不満なんかも、遠慮無く意見してもらおうってわけ。」
「何を言い出すかと思えば……。意見なんか出ねえだろ。」
東条巧巳がため息混じりに毒づいた。山本春海はその声を無視して続けた。
「物は試しということで、とりあえず10日間、昇降口に設置する。毎日放課後に箱を開けて中身を確認すること。
で、この役目は……」
と言ったところで山本春海は東条巧巳をチラリと見た。
「今日遅刻した東条巧巳にお願いする。」
「俺かよ!?」
個人的な恨みでやってねえか、と言いたいのをこらえて渋々承諾した。

こうして、新役員による里見学習院高等部のよろず世直しが始まったのである。

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